【私の章】入学式の苦い思い出
4月は、桜の季節です。
子供の頃は勿論、20代の頃まで、桜をじっくり眺めることはありませんでした。
田舎育ちなので、小学校から高校までの通学途中に、桜が咲いている所を通っているはずですが、綺麗だとか、花びらが散るのを見て、はかないとか思ったことはありませんでした。
それが、この年になると、季節の移り変わりや、春は桜、秋は紅葉とか、自然が大好きになっている自分が不思議です。
こんな気持ちが子供の頃にあったら、毎日の通学が楽しくて、心が和んでいたのではと思ったりします。ですが、こういった自然を愛でる気持ちは、熟年の大人になってから身に着くものなのでしょう。
話が、かなり逸れてしまいましたが、桜の季節=入学式に関する苦い思い出があります。それは、中学3年生の時の話です。
当時、生徒会長をしていたので、入学式で新入生を迎える挨拶をすることになりました。
春休み期間中に学校に通い、挨拶文を担任の先生に添削してもらいました。
原稿は手持ちして良いが、挨拶は原稿を見ずに話しなさいと言われ、文章を暗記しました。
そして、いよいよ入学式が始まりました。
おそらく司会進行は、1年生を担当する先生だったと思います。
式の後半あたりに、それでは在校生から新入生を迎える挨拶をお願いしますと紹介があり、私が起立して、新入生の前に立ちました。
右側の来臨席に向かって深々とお辞儀をして、左側の先生方に向かって深々とお辞儀をしました。
そして最後に新入生に向かってお辞儀をした後、いよいよ挨拶です。
開口一番、
「新入生に皆さん、ご卒業おめでとうございます。」
心の中で、「しまった」と思いました。やってしまったと。
思わず「すみません」とまで、言ったのは何となく憶えています。
その後は、頭が真っ白になって、その後、どう挨拶したのか、まったく憶えていません。ですが、そこで倒れたとか、誰かに付き添われて席に戻ったとかではないので、何とか挨拶をして終わったのでしょう。
なぜ、このような言葉を発したかというと、つい先日までは、卒業生に人に向かって、「ご卒業おめでとうございます」と連呼っするではありませんか。
入学式とは違い、当時は卒業式は、何回も何回も練習して臨むものでした。
加えて、入学式の挨拶の練習をする中で、間違ってもご卒業と言ってはいけないと頭の中で言い聞かせていました。結果的に、これが逆効果だったのです。
間違えてはいけないと思えば思うほど、インプットされてしまうのです。
翌日は、学校に行きたくないと思いましたが、根が真面目なので、ずる休みもできず、登校しました。
学校では、誰一人冷やかす人もいなくて救われました。
今なら、「卒業おめでとうございます」と間違ったら、続けて「これは、冗談です」と笑いを誘うこともできたと思いますが、14才の子供では、そんな機転はできませんよね。